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最期のエンターテイメント

 オランダ獅子頭の珠子(たまこ)が死んだ。いろいろな要因が絡んでいるが、主たる死因は水質悪化によるエロモナス感染症と思われる。結果的には、先日濾過器を外したのがマズかったということになる。
 同じ水槽で飼っていた琉金と丹頂にも軽い症状が出ているが、この2匹は珠子に比べると体がかなり大きいので、なんとか乗り切ってくれるだろう。

 珠子は、まだ小ぶりではあったが、じつに形のよい体つきをしており、4匹いる金魚の中でもいちばんのお気に入りだった。ぼくは、力なく水面に浮かぶ珠子をすくい上げ、その硬くなった体を手のひらに横たえた。こうして、直接触れてしげしげと観察するのははじめてである。

 頭のこぶに触れてみると(頭に大きなこぶができるのがオランダ獅子頭の特徴である)、それは予想外に硬かった。一方で、目の下の膨らみは、想像どおりゼリーのようにプニプニとした触感。喉のあたりを押してみると、それに連動して口がパクパクと開き、まるで生きているよう。なるほど、こういうしくみになっていたのか。

 人間でもそうだが、死んでから、まわりの者が、そのひとの何事かについて気づくということは意外によくあることなのかもしれない。例えば、遺品を整理したり、葬式にやってきたひとから昔話をきいたりといったことで。意外な事実をしかけて死ぬ、というのは、この世を去る者が後に残る者に送る最後のエンターテイメントかもしれない。

 あまり、仏さまをいじくり回すものではないだろうと、公園へ行って、珠子を埋めた。どうか、猫がほじくり返して食いませんように。珠子も浮かばれないし、猫も腹を壊す。

 最後に、哀悼の意を込めて、ぼくが金魚をテーマにつくった歌を送ろう。この歌のモデルというか、着想のきっかけとなったのが、まさしく珠子であった。


「いつか見た茜空」(作詞 にぎりこぷし)

 和金 琉金 朱文金 茶金 黒出目金
 らんちゅう 丹頂 地金 土佐金 青文魚
 南京 花房 蝶尾 羽衣 江戸錦
 コメット キャリコ パールスケール オランダ獅子頭

 そうさ、ぼくらは その赤い輝きに魅せられて
 思い出すのさ いつか見たあの茜空

 水清く 水泡眼 浜錦
 天高く 頂天眼 桜錦
 和金 琉金 朱文金 茶金 黒出目金
 コメット キャリコ パールスケール オランダ獅子頭

 そうさ、ぼくらは その丸い膨らみに誘われて
 思い出すのさ 遠い日の母のぬくもり
てきにき | 2007.05.18 Friday 14:00 | comments(2)
コメント
はじめまして、毎晩ホッとしながら楽しく拝見しています。

私も5〜6年程、"金魚すくいの金魚だったはずの金魚"の飼育に、予想を上回る労力を注いできました。
そして昨年、最後の一匹の和金「まーくん」が、珠子さんと同じく、エロモナスによる松かさ病により、徹夜看病の甲斐なく逝去しました。

エロモナスの病体がでた場合、水は全部作り直したほうが良かったんじゃなかったでしたっけ・・・うろ覚えですが、そんな気がします^^;

私もにぎりこぷしさんと同じように、動かなくなった"まーくん"を手に取り、うろこを撫でたり、お口やエラの意外な固さに驚きつつ、感慨に耽っていました。

初めて 甥っこから縁日の金魚を貰った時は、まあこんなもんだろー と、20cm程度のプラスチックの水槽に真水を張り、エアポンプを入れてた程度だったんですけども。
まさか、ここまで、というくらい金魚の飼育にはハマりました。(ハマらざるをえないというか。)

亡くなってゆく金魚を不憫に思い、濾過器を買い、砂利を買い、水槽を買い・・・最後の一匹のまーくんが残った頃には、バカでっかいフル装備の90cm水槽に、まーくんが一匹、という状態で。

生体が病気になる毎に、パラザンD、エルバージュゴールド、グリーン…と薬に詳しくなり。

半日かけて水槽掃除、大量の水つくり、水質試験紙で毎日PHチェックと、今思うと、かなり飽き性なのに、よくそれだけ根気が続いたもんだと思います。

それを知らずに姉と甥っ子は、気軽に金魚を持ってくる。
「これあげるわー。飼ってー。」と。

子供の頃は私も、父が庭に用意した金タライで行水しつつ、ワイルドに金魚掬いを楽しんだものです。

しんみりしつつ、まーくんを丁重に丁重に庭に埋めた後、餌を欲しがる猫のために猫缶をパカッと開けると、涙目の私を嘲笑うのように「しらすといりこの死体」がビッシリ。
ちょっと凹みました。

珠子さんとまーくんがどこかで逢えるといいなあ、なんて思ったりしています。
2007/05/20 7:07 AM | すずめ
生き物を育てるときに妥協できないのは、われわれの生物としての本能に訴えかけてくる部分があるからでしょうねえ。
2007/05/21 6:50 AM | にぎりこぷし